ちょっと贅沢な朝を演出するための、とっておき商品をセレクトしたブランド「L-me」(エルミー)。ジャムに続いて、歯科衛生士さんが作った虫歯になりにくい「森のキッチンソース」をリリースしました。
今回は、森の動物たちのイラストレーションを手がけてくださった熊木まりこさんにお話を伺います。
第一回目は「森のキッチンソース」の商品そのものをご紹介しましたが、第二回目は他ではなかなか見かけない独特のパッケージがどう生まれたかをお届けします。
イラストレーター/熊木まりこさん
1988年、東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
イラストレーション青山塾2年通塾後フリーに。
ラフでのびのびとしたタッチで、色鮮やかで暖かみのある
風景・人物などを描く。
海外旅行(45ヵ国以上)とサウナ・温泉が大好き。
https://marikokumaki.com/top
下岡亮太
古賀静里菜
下岡 熊木さん、お久しぶりです。ファントムの下岡でございます。
熊木 はい、こんにちは。
下岡 今回は「森のキッチンソース」のパッケージがどういう流れで誕生したかを、サイトを見る方にお伝えしたいと思っています。
―今回、熊木さんの作品を拝見して、仕事の忙しさで心の余裕のない中、気持ちがホッとしたんです。束の間の休息をいただいた気がしました。
熊木 ありがとうございます。私自身も周囲を見渡してみると、社会に精神的なゆとりが少ない気がしています。だからこそ、毎日お仕事で頑張っている人たちの精神的なものが、私のイラストを見ることで緩んだり温められたらいいなと思って描いているんです。日々に癒しやリラックスを与えられる表現をすることがイラストを描く上での軸となっている部分です。
―まさにその通りでした。この温かみあるタッチになった背景を聞かせていただけますか。
熊木 特に自分の中では意識をしていませんが、直線的なもの、角ばっているもの、色をフラットに塗ったイラストではなく、緩みがあってニュアンスのあるものがしっくりくるので、自然と柔らかいタッチになっているのかなと思います。自分の中で、少しラフで砕けた感じを大切にしたいというのもあります。
―ひと時、私がホッとした部分には、熊木さんご自身がせかせかしない性格だという面もありますか?
熊木 そうですね、もちろんイライラする時もありますが、基本的には「なんとかなるさ」という気持ちがベースにありますね。
―なるほど。東京生まれの熊木さんだからこそ俯瞰で見られるのでしょうか。「そんなに急がなくてもいいのに」というように。
熊木 そうですね、あるかもしれないです。通っていた高校が都心だったので、電車も満員でぎちぎち。そういうところも疑問に思っていましたから。あと、海外旅行に行く機会が多いと日本全体がせかせかトゲトゲしている感じがあって、一概には言えませんが「みんな心にゆとりがないのかも?」と感じます。
―海外の方は日本人ほど細かくないイメージがあります。
熊木 そうですね、それはすごく感じます。
―私から見るとファントムの方たちもお忙しいにも関わらず、マインドがおおらかな感じがします。
古賀 あ、ほんとですか。
―だからこそ熊木さんにお仕事をお願いする流れになったのではと勝手に思っていました。
下岡 いや、とにかく古賀のひと目惚れなんです。「熊木さんじゃなきゃダメ」という感じで。古賀は実をいうとガツガツ分単位で仕事をする人なので、おおらかではないと思うんです(笑)。逆に熊木さんのそういう世界観が、180度逆だからこそぐっと来きたのかと傍から見て思っています。
―古賀さんは熊木さんのどのイラストを見て、ひと目惚れをされましたか?
古賀 普段イラストレーターさんのイラストをInstagramでひたすら保存する癖があるんです。その中に熊木さんが静岡県の海辺の町でミニ個展をされた時のイラストがありまして。
―わあ。私もそれすごくいいと思いました。
古賀 旅をしながらスケッチで描いていらっしゃるイラストもすごく味があって素敵で。「L-me」の商品をハイセンスな方にも届けたい気持ちがあったので、心情や人柄も伝わりつつ、温かさもあって、しかもちょっとエッジの効いたスパイシーなところがピッタリだなと思いました。海外のものをたくさん見ていらっしゃるからか、配色やちょっとした細部の施し方が海外チックなのがドンズバではまりました。熱く語ってしまいました。
下岡 熊木さんと初対面の時なんて、古賀の感情が前に出すぎて「熊木さんは、いけてるんです!」とか言っていて。
―ストレートですね(笑)。熊木さんは古賀さんの熱意を受け取っていかがでしたか。
熊木 自分で自分のことはあまり分からないので、そうやって言葉にしてくれる方がいると、すごくうれしく思います。
―古賀さんから「L-me」のパッケージを依頼された時に、「やってみよう」と思った決め手は?
熊木 そうですね、Instagramは経歴やネームバリューじゃなくて、シンプルに作品を見て繋がれるところがすごくいいなと思いましたし、以前から個人的にパッケージに興味がありました。普段は雑誌の仕事が多いですが、立体として物になるものは使われ方が違うのでやってみたいと思っていた矢先に古賀さんから連絡が来たんです。
―たまたまタイミングが合ったと。
熊木 はい、そうですね。物になると存在感があるし、パッケージには普通に暮らしている人たちの気分を上げる役割があると思います。生活の中で使うものや食べるものにイラストを添えて、元気を与えられたらと思いますね。
―元々そういう気持ちがおありになったということは「L-me」のブランドコンセプトに、ぴったりですね。
下岡 そうですね。まさかそういう思いが熊木さんにあったことを初めて知りましたので、今我々の気分が上がっています。
―熊木さんにイラストをお願いする時点で、パッケージの形はもう決まっていましたか?
古賀 形自体は決まっていました。
下岡 食べながら目でも楽しむという点、開いて楽しんで発見するというコンセプトからブック型になりました。そしてできるだけ効率よく手軽にお届けしたいということから、ネコポスの箱に入る専用のサイズで設計しました。首のところでホールドする部分は何度も施策を重ねました。
―大変そうですね。
下岡 そうですね、抜けそうで抜けないんです。抜けたら困るし、取れにくくなるとはめにくくもなりますから。
―商品のサイズから世界観までよく考えられているなと思いました。配送の方法も練られていてかなり完成度が高い。
下岡 うれしいですね。
インタビュアー/宗我部香
※次回のVol.03では、パッケージ作りのインタビュー「〈後編〉 〜隠れたこだわりと完成までの道のり〜」をお届けします。